楽園(1)
それは楽園だった。
初日、ボクらが向かったのは、Rangitaiki川支流Waihua Stream。今日はまずドライでやってみたいと申し出ると、MurrayはMuruparaから30km程下流でRangitaiki川に流れ込むここに迷い無くやってきた。彼の秘密の入渓点──限りなくただの「崖」に近かったのだが──を難儀して下ると、そこにはまるで日本の小渓流のような渓相が広がっていた。河岸に立つと早速、君のシケーダを見せてくれと言う。差し出すと、ニッコリ笑ってグッドだ、まずはグリーンで行こう、とボクのシケーダをクリンチノットで結び始める。そして、少し上流に歩こう、君にはシケーダの声が聞こえるかい、と聞く。しかしボクには、それらしい音が何も聞こえない。
その瞬間は突然やって来る。
入渓点から一気に300m程歩き、まずここをブラインドでやってみようとMurrayが言う。確かにそれらしいポイントである。フォルスキャストを1度入れ、15ヤード先の緩やかなその流れに#8のシケーダをポチャンと落とすと、コロコロと下り始める。…当然だが、目立つなんてもんじゃない、明らかに「異物」である。流れきったシケーダをピックアップしながら、このフライ選択はやはりバカげている、と正直思う。しかし、Murrayは「もう一度」と言うだけである。ポチャン、コロコロ……「もう一度」……ポチャン、コロコロ。…その「異物」が泡の切れ目を通過するちょっどその瞬間、巨大な銀色の円錐がゆっくりと水中から持ち上がり、「異物」と共に波の中に消えて行く。…え゛?
な、なんじゃありゃ…。と同時にMurrayの怒声が飛ぶ。フィーーシュッ! 右手はすでに反射的にロッドを立てている。ゴンッ、プチッ……うわっ、切れたっ!
60オーバー、とMurrayが笑う。ボクには起こった出来事の半分程度しか理解できないまま、Murrayは歩を進める。次に行こう、すぐそこだ。30m程行くと、確かに同じようなポイントがある。
フォルスキャスト、ポチャン、コロコロ、今度は一発目に円錐が浮上してくる。来た来たっ…。シケーダが水中に消えるのを確認して、今度は気持ち弱めに合わせを入れると、3Xのリーダーがピンと張りつめる……よし、乗ったっ!
ジジジ、ジィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッ!
破壊的なリールの逆転音とともに、銀色の砲弾がフライラインの存在を無視するかのように上流に向かって強烈な突進を始める。…うわっ、止まれ止まれっ! 念じたのが通じたのか、不意にストップする。…ふぅ、止まった。…と今度は前にも後ろにも全く動かない。リールを巻きながら距離を詰める。とまた走り始める。ジジィィィィィーーーーーーーーッ! 止まれっ…。詰める。5分以上繰り返して上がったのが、52cmのこいつだった。
…あはは。自然と顔がほころんでくる。とうとう仕留めた、NZのレインボー。ドラグを確かめる。あはは、やっぱり一番キツくしてあるのに。しかも本当にシケーダに出ちゃった…。出来すぎてる、これは出来すぎてる!
これはさらに1km程上流での2尾目とのファイトの瞬間。絶叫するリールを後目にこいつは瞬く間に30ヤード疾走し、このあと追いかけっこの状態となった。
そしてランディング。48cmとは思えない、惚れ惚れするようなファイトだった。
この後、瞳にバトンタッチ。2度程チャンスはあったが、残念ながらフッキングに至らず。視覚的な衝撃度があまりにも強いことが、逆にタイミングを狂わせてしまうようだ。瞳は翌日、この借りをきっちり返すことになる…。
初日は、シケーダに始まり、シケーダのうちに終わった。Murrayも、明らかにシケーダにこだわっていた。ボクにはそれが嬉しかった。あまりに日常的な景色の中で起こる、あまりに非日常的な出来事。このことから目が覚めないまま、あっと言う間に楽園の初日が暮れたのである。
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コメント
すんげー。
流れの中での50cmアップのレインボーってのは、
もの凄い引きなんでしょうな。おめでとう!!
今日は、天竜ですね。70cmアップ期待してます。
それと、NZレポ 第2弾以降もね。
投稿 うみう | 2006年1月 3日 (火) 05時01分
ワシも絶対NZ行ったるど!
投稿 かわう | 2006年1月 3日 (火) 16時36分