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2006年9月23日 (土)

武勇伝

とうとう我が家最強のフライタックルを手放すことになった。

ランドクルーザー70、5ドア・4.2Lディーゼル・5MT。丸9年乗って、総走行距離16万8200キロ。愛知県に適用されているNOx法によって、来月までに手放さざるを得なくなったのだが、この年式・走行距離だから、どうせ二束三文にしかならない。誰かこのままで乗り潰してくれる方があれば、喜んで譲ろうと思っていた。…が、なかなかマニアックな車だけに、もらい手も見つからない。
で、今日、足を運んだ買取専門店に見積りを取ってもらって、久し振りの衝撃を受けた。

買取額: 104万円

す、すげぇ…。

060923landcruiser

ボクのこれまでの釣り生活を支えてくれた思い出に、いくつかこの車の武勇伝を記しておこう。

・納車されてまず驚いたのは、サスペンションの固さだった。大きな許容荷重と耐久性から、トラックの後輪などに装着されるリーフ式サスペンションが4輪ともに付いたこの車の乗り心地は想像以上だった。が、ある時、シート下に妙な回転式レバーが付いているのを発見した。「なんだこりゃ…?」。回すとシートが沈んでいく。それが「シートサスペンション」という、シート下に付けられた振動吸収用の装備の存在を初めて知った瞬間だった。

・当時愛知県の地理に疎かったボクは、すぐにナビを付けようと探し回り始めた。が、これはあっさり諦めざるを得ないことを知った。この車のエンジンルームには、通常の車より遥かに大きなバッテリーが2個収まっていた。供給電圧は24V、つまり通常の車の倍。「市販のナビで24Vに対応しているものはありません」と店員に申し訳なさそうに謝られた時、ボクはこの車を普通の車と思うことを完全に止めることにした。

・この車は軍用を想定されているから、使われている鋼板の板厚が一般の車とは次元が異なる。ボンネットフードを持ち上げるのにこれほど苦労する車もそうないはずである。空車質量は2.2トンに及び、結果としてそれまで気にしたことも無かった立体駐車場や吊り橋の重量制限に引っ掛かることもしばしばだった。ガソリンスタンドでタイヤローテーションを頼んだ時、色々やってみたんですがどうもうちのリフターで持ち上がらないようです、と断られた時は思わず笑いが込み上げてきた。

・エンジンは4.2Lディーゼル。イマドキの欧州のディーゼルエンジンに較べれば、130馬力という最高出力こそどうってことのない値である。が、強みは何と言っても昔ながらの自然吸気という点。1000回転以下で驚異的トルクを発生するこのエンジン、エンストとは全く無縁だった。2速発進で通常の車の1速発進と同じ、3速発進も全く問題なし。1速に入れようものなら、速度が0kmになるまでブレーキを踏み込まないとエンストしない為、むしろ危険だった。

・同じくイマドキ珍しい、直結式の4WD機構の走破性には救われたことが多かった。年始の休みの最終日の夜、東京から名古屋への東名高速が急な大雪で通行止めとなったことがあった。秦野中井ICから国道246号線に入ると、坂道の道路端にはチェーンを付けているにもかかわらず動けなくなった乗用車が列をなしていた。…こらあかん。ボクはチェーンを持ってきていなかった。いつギブアップになるかとビクビクしながら、アクセルを踏み続けるが、不思議と滑り始める気配が無い。しばらくすると、まともに走っている車はボク一台になった。…無事裾野ICで東名に戻った時、ホッとすると同時にこの車への尊敬と畏怖の気持ちがやまなかった。

・恵比寿の小さな交差点の右折で止まっている時、コンという微かな衝撃を感じた。ひょっとして、と思ってすぐに車を止めてみると、後ろの車から家族連れのお父さんとおぼしき方が走ってきて、すみません、と頭を下げた。あ、やっぱり追突か、と思って車の背面を見に行くが、スチール製のバンパーにはどうやら傷一つ付いてない。警察を呼びましょうか、という先方に、いいですよ、傷もないですしと振り返った時、まだ新しそうな相手の車が見えて唖然とした。バンパーからボンネットフード・ヘッドランプにかけて、原型も分からないほど凹んでいた。むしろ申し訳無い気持ちになった。

・蓼科の別荘の駐車場で、ヨメさんがバックギアに入っているのに気付かずに車外からエンジンを掛けてしまったことがある。10cm程ある車止めをあっさり乗り超え、車は後ろ半分が1mほどの段差を転落。アンダーボディとリアバンパーの2点で地面に接する形で車は止まった(上掲の写真)。流石にこれは相当のダメージになると思った。JAFを呼びクレーンで持ち上げると、リアバンパーは泥まみれにこそなっているが、曲がり・歪みの形跡は皆無。アンダーボディを覗き込むと、石垣の角に接していた分厚いトランスミッションプロテクターに擦り傷がある程度である。恐る恐るエンジンを掛けると、パーンという音ともに排気管から大量の泥を噴き出して、何事も無かったように通り動き始めた。JAFのスタッフがつぶやく。「やっぱり全然違いますね、コイツは…」。

この車は、きっとこれから中古車として中近東地域に輸出され、第2の人生でやっと本領を発揮し始めることだろう。ボクがこの9年に見たのは、この車の実力のほんの一部でしかないのだ。
…この車との最後の釣行に、明日ボクは一緒に数知れず通った木曽川に出かけてみようと思っている。

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コメント

その節はお世話になりました。
これが例の現場の写真ですね。
さよならの前にこの車に乗ることができてよかった…。

投稿 東京のヨメ友 | 2006年10月 7日 (土) 00時39分

お。

この写真、ボクら的にはかなり危機的状況を撮ったはずだったんだけど、なんかのどかな雰囲気が漂ってるんだよね…(そもそもこういう記念写真撮ってるボクもボクですが)。

ちなみにもう一枚、ヨメさんが車の後ろから撮ったもっとエグさ満点な写真もあったんだけど、ボクが車の隣から笑顔でカメラ目線を送ってたんで不採用にしました(笑)。

投稿 ミッチー(店主) | 2006年10月 8日 (日) 00時38分

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