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2008年9月 1日 (月)

カラフトマス症候群2008 3日目

朝7時。
阿寒から160kmの行程を、やっぱり戻って来てしまった。

080901rausu

夏のカラフトマスに入れ込んでいるというFFMを、ボクはあまり聞いたことがない。が、大海原に向かって修行僧のように立ちこむスタイル、神出鬼没の背鰭がキャスティングレンジに近づいてくるワクワク感、群れにリーダーが交差するその瞬間の高揚感、…ボク的にはFFの面白い要素が凝縮されているような気がする訳です。

…しかし、いかんせん今日はサカナの気配が無い。

全くキャストをする機会が無いまま、9時になる。
と、昨日の仙人がやって来た。しばらく群れを探し、不意に河口からは随分離れた沖にキャストし始める。どうやらサカナを見つけたようである。様子を見ていると、ボクの方を振り返り、手招きする。

─あそこにサカナが見えるか?
─どこですか?
─そこそこ。
─……。
─見えんか。見慣れんと見えん。ワシは物心ついた時からここで漁師やっとるから、見える。
─あ、いたいたっ。
─見えたか。慌ててキャストせんでいい。そこでじっと待って黙ってやってれば、そのうち回って来る。

言われた通り、しばらく待ってみるが来る様子はない。仙人も手を出しあぐねている感じである。

─来ませんね。
─釣れん時は何をやっても釣れん。マスはそういうサカナだ。

しばらくすると仙人の視線が一点に注がれ、先ほどの背鰭が見えた場所とは反対側を顎で指示する。早くキャストしろ、という無言のメッセージである。仙人の視線の先にキャストし、指先に神経を集中する。仙人も凝視している。何度かキャストを繰り返す。が、反応は無い。

─いますか?
─いるよ。

仙人がキャストする。仙人の釣り方は独特である。浮き下30cm程にタコベイト、ハリに赤く染めたイカを付けるという仕掛けは一般的であるが、ただ浮かせておくのではなく、5秒に一度ほどロッドを煽ってアクションを付ける。この点が、他の餌釣り師との決定的な違いであり、非常に効果的なように思える。
波間をゆらりゆらりと揺れる浮きを目で追っていくと、ひったくるようなアタリが出る。昨日と同様、凄まじい合わせを入れて一気に寄せる。背の色が濃くなったメスである。

─昨日のは銀ピカだったけど、今日のは黒い。こういう黒いのは口を使わなくなるし、北から回ってくる間に他の釣り師に相当苛められとるから、地元の人間でもなかなか釣れん。
─なるほど。
─…今日は群れが少ないな。
─群れが来る来ないは何が条件なんでしょう? 潮? 時間帯?
─それもあるけど、来ない時は来ない。そういう時は帰ったほうがいい。

いつの間にかこの仙人との会話がこの厳しい釣りの癒しになってることに気付く。突然自分のテリトリーに現れた県外の人間に対してここまで心を通わせてくれることが素直に嬉しい。
仙人がまた顎で指示する。背鰭が見えたようである。キャスト、リトリーブ。釣れない。1時間もすると、仙人は帰り支度の素振りを始めた。今日は魚が少ないらしい。

─まだやってくの?
─ええ、今日が最後ですから。
─そうか…じゃ、ワシももうちょっとやって帰ろう。

2人並んで無言でキャストを続けるが、2人とも全く反応が無い。気がつくと11時を回っている。阿寒湖からこちらに向かう車の中で考え続けていたのは、今日は何をもって終わりにするか、ということであった。昼過ぎまで、と言って出かけてきたことを考えると、リミットは間近に迫っている。

─ワシはもう終わる。今日はもう群れは来んよ。今年はダメだ、来年また来るといい。
─そうですね、ボクも終わりにします。

不思議と清々しい気持ちだった。完璧な敗北。今朝阿寒を出発する前に、勿論こうなることは予想していたし、むしろ9割がたこうなるだろうとも思っていた。
仙人にお礼と別れを告げ、竿を車に積み込む。また160kmのドライブである。思わずため息が出る。3日間キャストし続けた右腕は上がらないほどパンパンとなり、シューティングラインに擦られ続けた人差し指と中指の裂傷からは血が止まらなくなっている。ボクなりに精一杯やった証である。
エンジンを掛ける。時計を見るとまだほんの少し時間がある。…どうせなら来年に向けて相泊漁港までの川を下調べしておくか、という考えがよぎる。


結局、この最後の釣り欲が運命の分かれ道だった。
10分ほど車を走らせて着いた小渓の河口に群れを発見し、キャストすること僅か数投。

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「一メートルも一匹。二十五センチも一匹。一匹は一匹なのだ。そして最初の一匹に釣りのすべてがあるのだ。ナメちゃいけない。芸術はセンチじゃないのだぞ。」

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コメント

おめでとう。
1匹の重み、伝わります。
来年の計画、立てようね( ̄ー ̄)ニヤリ

投稿: B@静岡 | 2008年9月 6日 (土) 04時14分

計画、立てましょう。
逆説ではなく、この釣りは外れ年のほうが面白いのではないかと思いますが。

@静岡って、なにやってるんでしょうか(笑)? 汽水の湖に浮いてるとか。

投稿: ミッチー(店主) | 2008年9月 6日 (土) 13時25分

バタバタしててコメント遅れました。

うーん、タイミングやねぇ~ タイミング。
この釣りは何処であろうがタイミングがキーワードという気がするなぁ~。
で、釣れてなによりでした。
で、来年はアタリ年やったっけ?
来年も夏休みは道東でキマリ、来年は知床行きた~い!

投稿: 滋賀のおっちゃん@Zurich | 2008年9月11日 (木) 00時27分

お、@チューリヒですか。
もうかなり涼しいんではないでしょうか。

キーワードはタイミング、まさにその通りだと思いますねぇ。
知床まで出かける最大の目的は、自然のリズムに翻弄されに行くことにあるような気がしてます。
来年はアタリ年です。仙人曰く「来年ならフライでも釣れる」と。とにかくFFをバカにしてたんですが、残念ながらボクがそれを確信に変えてしまいました(涙)。

投稿: ミッチー(店主) | 2008年9月11日 (木) 23時35分

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